ロビタは乱暴にユーリを突き飛ばし、ユーリは地面に転がった。

「いいか、おめえ、にげようなんて考えんじゃねえぞ。もしにげたら、おめえの家族がひどい目にあうぞ。いいか、おぼえとけよ」

 するとそこへ、ザネリの声がした。

「おいおい。どうしたんだ」

 地面の上から、ユーリはザネリを見上げた。

 逆光で、ザネリは黒く、巨大に見えた。その影が屈み、ユーリに向かって手を差し伸べた。

 ザネリがユーリの腕を掴み、引っ張って立たせるのを見て、ロビタはわめいた。

「ザネリさん、そいつは信用ならねえ! おれたちから逃げようとしてる!」

「そりゃそうでしょ」

 と、第三者の声。
 ユーリとロビタは揃って振り向いた。
 大きな黒い鞄を持った、中背中肉の男が、ザネリの後ろに立っていた。

「こんなとこに閉じ込められてりゃ、逃げ出したくもなるでしょ。可哀想にねえ」

ハンカチで汗を拭き拭き、男は言った。

「誰だおめえ」

ロビタが吠えると、ザネリは言った。

「そんな口の利き方するんじゃない。彼は医者だ」

「いしゃぁ?」

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