ロビタの骸骨のような顔を見た彼らの顔から、電池が切れるように、笑顔が消える。
 小さな女の子が、怯えたように年上にくっつく。年上の男の子たちがヒソヒソと囁き合う。

 ロビタの顔が、くしゃくしゃっと歪んだ。

 子供って正直だな、とユーリは思った。いいぞ、もっとやれ。

 すると、ロビタはくるりと後ろを向き、岩窟のモザイクに顔を顔を埋めるなり、叫んだ。

「おれを見るな!」

 その叫び声に、子供たちだけでなく、思わずユーリも体を震わせた。

 子供たちは、イジドール語で何か言いながら、一斉に逃げていく。 ユーリは逃げることも出来ず、ただ立ち尽くして、壁に頭を打ちつけるロビタを見つめることしか出来ない。

 カラスの悲鳴のようにしわがれた声で、ロビタは叫び続けた。

「おれがいったい何したってんだ! 好きでこういう顔に生まれたんじゃねえのに!
 みにくいってだけで、きもちわるいってだけで、おれには、生きてる価値もねえのかよお!」

 赤やオレンジの美しいガラス片が額を割り、ロビタの顔面に血が滲んでいく。

 ユーリは何も言えなかった。

 この醜い男が、イオキを憎んでいるのは知っていた。 クレーター・ルームから逃げる列車の中で、ホテルからイオキを拐ってきた彼と合流した時から、 彼のイオキを見る目つきは、尋常ではなかった。

--------------------------------------------------
[301]



/ / top
inserted by FC2 system