充血した黄色い眼球で、長いことユーリを見つめていたロビタは、やがて頷いた。

「そうだ。おれはザネリさんの片腕だ。生きてればかならずいいことあるって、おれを助けてくれたのはザネリさんだ。 ザネリさんがわざわざ助けるだけの価値が、おれにはあるんだ」

 同じことをザネリに言われたのを、ユーリは思い出す。

 ワルハラから拐われる道中の船上で、「家に帰らせてくれ」と懇願し、それを無視された時に。
 よっぽど死んでやろうかと思って海面を見つめたその時に、彼は穏やかに言った。


「今や君が持っているものは、希望だけだ。絶望しかないように見えても、箱には必ず希望が残っている。 箱を手放してしまったら、希望すら失ってしまうんだぞ」

と。


 馬鹿みたいじゃないか。

 俺もこいつも、その希望とやらにすがって、今ここにいるんだから。


 ユーリはモザイクで煌めく岩窟を見上げた。ロビタは血だらけの顔に泣き笑いの表情を浮かべ、ヒイヒイ笑い出していた。


 ――こんな状況で、希望なんて、一体どこにあるって言うんだよ。

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