「私が直接拾ったんじゃない」

 ザネリは手短にユーリとイオキのことを説明した。話を聞いた医者は唸った。

「ミトの住処の近くで拾ったとなると、七人のグールの、隠された八人目ってとこかな?  彼らには秘密の女王がいるって噂もあるから、九人目かもね。けど分からないのは……」

「何故人間を食べないのか」

ザネリが呟く。医者は頷いた。

「そう。人間を食べるのはグールの本能であり、彼らの精神を安定させる行為だ。 食べなくても死にはしないけど、精神バランスの崩壊を引き起こし、結果的には死へ繋がる。 あの子はどう見ても、己の意志で人間の血肉を断っているよね。 倦怠感とか拒食は、その延長だよ。一体全体、どうしてそんなことになったんだろう」

ザネリは肩をすくめた。

「人間にだって、坊主みたいなのがいるだろう。グールにも、一人くらいそういう奴がいるんじゃないか」

医者は目をぱちくりさせた。

「君、どうでも良いって感じだねえ」

「どうでも良いよ。とりあえず、健康であることが分かったんだ。 後は、グールだろうが人間だろうが、あの子が一番高値で売れる場所を考えるだけさ」

「まだそんなこと考えてるのか?」

「まだって?」

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