すみません、とユーリは口の中で呟くと、かまどへ戻り火の始末をして、自分の皿を膝に乗せた。

 いつもと同じ、バラバラな位置に座る四人の、無言の朝食風景が始まる。

 固いパンを噛みちぎりながら、ユーリはイオキをチラリと見た。
 イオキは皿を膝に乗せたまま、ぼんやりと魚を見つめていた。
 またか、とユーリは内心ため息をついた。

 何が気に入らないのか、この緑の瞳の少年は、驚くほど物を食べない。 明らかに空腹な様子なのに、頑として食事を拒むことがよくあるのだ。

 そして、そうなると、次に何が起こるかは大体決まっている。

「おめえ、まーた食わねえつもりか?」

 魚の骨まで綺麗にたいらげた骸骨男が立ち上がり、イオキへ向かって歩き出した。

「なんど言ったらわかるんだ。おめえはだいじなしょうひんなんだから、たんと食って、きれいにしてなきゃならねえんだよ」

男はイオキの皿から魚をつまみ上げると、彼の口元に持っていった。

「ほれ、食え、食え」

イオキは顔色を悪くして、顔を背けようとする。攻防は一分ほど続いたが、やがていつものように、イオキが降参した。

「分かった…… 食べるから、あっち行って」

男は鼻を鳴らすと、魚を皿の上に放り投げ、元いた場所に戻っていった。

 イオキはノロノロと魚をつまむと、ため息をつき、ゆっくり口に入れ、粘土でも食べているかのような表情でそれを咀嚼した。

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