全て当て推量だったが、図星のようだ。
 ロビタの声が、一気に低くなる。

「ゆだんならねえやつだ」

 ユーリは僅かに動揺したが、それを隠し、急いで言った。

「なあ。だったら、いつまでもここにいたって仕方ないじゃないか。 ここで解放してくれれば、一人で勝手にワルハラまで帰るし、あんたたちのことは絶対誰にも言わない。だから……」


 バキッ、と骨同士のぶつかる音が、乾いた空気に響いた。


 ロビタに頬を殴られ、ユーリは倒れた。
 キャップと一緒に、洗ったばかりの洗濯物が、モザイクの地面に落ちる。頬の内側が切れる痛みと共に、口の中に血の味が広がる。

「おれをだまそうったって、そうはいかねえ。おれはな、ザネリさんのかたうでなんだ。けっしてザネリさんを裏切ったりしねえ」

 拳を握ったまま、ロビタはわめく。

 血と唾液が口内に収まりきらなくなり、たまらず、ユーリは吐き出した。白と青と緑の陶器でオアシスを画いた美しいモザイクの上に、真っ赤な鮮血が散る。

「それにな、ザネリさんはちゃぁんと、このさきどうするか、考えてんだ。おめえとイオキを、どこに売りとばすかな」

 ロビタは屈むとユーリの髪の毛を掴み、揺さぶった。

「おめえみたいな、うまい料理も作れねえやくたたず、だれも買ってくれるもんか。 おめえの価値がある部分ったらよお、ないぞうくらいしかねえだろうが」

 頭をグラグラ揺すられながら、ユーリは、火のように熱くなっていく自分の体に言い聞かせた。

 泣くな。怖がるな。こんな奴、口ばっかりだ。

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