彼女の手の触れたところから熱が広がり、夕風に冷まされた体が、再び汗ばんでいくようだ。 疲れから来る倦怠感が、それをさらに加速させていく。
 イオキは目を閉じ、全身の血液が清らかになっていくような、うっとりした陶酔感に身を任せた。

 このまま眠って、もう二度と、目覚めないかもしれない。

 美しい棲家に、美味しい食事。与えられる着物も書物も音楽も、何もかもが上等。そして何より、そこへ注がれる無限の愛。 早朝の静寂に満ちた大聖堂の天辺で、朝日を透して輝く、薔薇窓のような世界。


 そんな世界の延長線上に広がる果てない宇宙で、体が燃え、一つの星となる瞬間には、こんな感覚に包まれるのかもしれない。


 ――イオキは目を開けた。


 熱い。
 玉虫色の壁が黄金に輝き、表面に大きな影が揺らめいている。
 ロビタがガラスを引っかくような声で喚いている。

「あいつはカタギじゃねえ、おれにはわかるんだ!」

全身を悪寒が襲うのを感じながら、イオキは何とか固い石のベッドの上で寝返りを打ち、部屋の中央へ目をやった。

 ユーリがかまどで料理をしている傍らで―― 昼食だろうか、夕食だろうか?―― ザネリとロビタが話していた。

「きっと、おってだ。あの、れっど・ぺっぱーとかいうやつらの、仲間だ」

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