「ま、待ってくれ! 俺はこいつらの仲間じゃない!」

 真っ青な顔でユーリが叫んだが、敵は聞く耳を持たなかった。

 部屋に入ってきた四人の乱入者は、狭い部屋での跳弾を恐れてか、三日月形に湾曲した刀を抜く。

 舞うような動作でユーリの頭へ刀を振り上げる敵の足に、 ロビタが体当たりを食らわせる。思いも寄らぬ低い位置からの攻撃に、よろめく背中をさらに押し、相手の頭をかまどにつっこむ。 頭を抱えたユーリのすぐ横で、恐ろしい悪臭と共に、身の毛もよだつような絶叫が上がる。

「こいつらだ! やっぱり、おってだったんだ!」

 ロビタは叫んだ。

 ザネリは愛用のトレンチナイフで、二人を相手に戦っていたが、円を描くような独特の動きで交互に刀を振ってくる敵に、 苦戦を強いられていた。ロビタは背が極端に低いので、意外と善戦しているが、それでも相手の攻撃を避けるので精一杯。 ユーリに至っては、ただ、逃げ回ることしか出来ない。

 ほんの五分前までは、普段と変わらぬ夕餉の席だったのが、今や殺し合いの修羅場だった。

 ザネリのネクタイと背広が裂け、ロビタの頭に赤い線のような切り傷が走る。
 つい先までは海老や蛸を茹でていたかまどの炎が、 今や地獄の業火となって、殺し合いの影を玉虫の壁に揺らめかす。

 イオキは唾を飲んだ。

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