「あら、持ってくれるの?」

「クレーター・ルームを出るまでは、お供しますよ」

 その様子を見て、レインはがっかり肩を落とす。

 すると、ルツが笑って、レインの前に懐中電灯を差し出した。

「それじゃあレインには、道を照らす係をお願いしましょうか」

 レインは顔を上げると、ほんの少し表情を明るくして、懐中電灯を受け取った。

「すごくいっぱい歩くわよ。マリサ、歩ける?」

登山リュックを背負ってルツに尋ねられると、「分かんない」とクマの形のリュックを背負って、マリサは素直に答えた。

「でも、歩けるとこまでは歩くよ」

 そこで一行は歩き出した。

 レインが先頭に立ち、そのすぐ後ろに地図を持ったルツが続いて、分岐点に来るとどちらへ曲がるか指示した。

 どっしりと重い懐中電灯を以ってしても、トンネルの奥まで光を届かせることは出来ない。トンネルに、五人分の足音が響く。 延々と、赤い金属の壁が続いていく。
 いくつの分岐を越えても、周囲の景色はまるで変わらなかった。
 ただ、随所に興味深い物があった。別の川へ続く分岐では、水門を開閉する大きなバルブがあった。水圧計もいくつもあった。 それらは全て錆びついていて、長く使われていないのが見て取れた。レインは興味深い物に出くわすと、 懐中電灯をくるくる回してそれを観察した。

 やがて懐中電灯を持った右手が重くなり、次に足が重くなったが、レインは何も言わず歩き続けた。マリサも、老人も、 誰も弱音を吐かなかった。

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