ルツと老人の間に挟まれ、レインはいつの間にか、眠ってしまっていた。 「……レイン、レイン」 優しく揺さ振られ、レインは目を開けた。 「そろそろ着くわ」 何か良い夢を見ていたような気がするが、早くも忘れてしまって、思い出せない。 寝ぼけ眼で右隣を見ると、マリサが盛大によだれを垂らして寝ていた。さらに左隣を見ると、老人もよだれを垂らしていた。 しかも助手席のニルノまで、鼾をかいていた。 何だ、ともう一度寝ようとして、レインは外の様子が変わっているのに気がついた。レインは体を起こし、 運転席と助手席の間に顔をつき出した。 いつの間にかトンネルは上り坂で、二車線分以上の広さになっていた。両の壁には、等間隔に赤いランプが回り、 ところどころに黄色と黒のライン、そして大きな文字が書いてあった。レインは首をひねり、あっという間に後ろへ 去っていった文字を読んだ。 『↑三一八取水口(七十七市第一貯水池)』 「あら、起きた?」 レインの顔の横で、アイが言った。 「もうすぐ外に出るわよ」 レインは車のデジタル時計を見た。四時三十分という表示が出ていた。 と、不意に、外が明るくなった。 レインの顔を、眩い朝日が照らした。 懐中電灯や車のランプよりも、ずっと瑞々しい黄金の光が、遥かな森と丘、そして黄色の軽自動車を、静かに照らし出していた。 -------------------------------------------------- |