「……もう一つ、聞きたいことがあるの」

 ほんの少し眼差しを和らげ、ルツは静かに尋ねた。

「確かあの取材は、使骸に関する記事を書く為の取材だったわよね。 それがどうして、『人間農場の功罪』なんてタイトルになっているの? そもそもあなた、どうやってレインの過去を知ったの?」

「それは……」

 ニルノは言いよどんだ。
 長いことニルノは迷っていたが、ルツの瞳にじっと見つめられると、やがて、観念したように答えた。

「タキオから。いや、正確には、タキオと一緒にいた、ロミっていう女の子から」

 はっとレインが顔を上げる。

「あなた、タキオの知り合いなの?」

「ええ。ルツさんのことも、最初はタキオから聞いたんです」

成程、とルツが呟くと、ニルノはいそいで言った。

「でも、今回の件に関しては、あいつは無関係です。 本当に最初は、天才使骸職人と使骸についての記事を書きたくて、マイスター・メグロにアポイントを取ったんです。 そしたらたまたま、例の手術に立ち合わせてもらえることになって、その後たまたま、ロミからレインのことを聞いて……」

 おろおろとニルノが説明すると、しばらくの間、地下工房は静寂に包まれた。

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