「あのね」

 とルツはそれでも、一言言ってやらねば、気が済まなかった。

「あなたは我が家の、ブラックリストに載ったんですからね。もうあなたの取材なんか、金輪際受けませんから」

 マリサが「うんうん」と何度も激しく頷く。それを見たニルノは、さすがにしおらしい態度になった。

「分かってますよ〜…… だからこうやって、お詫びしに来たんじゃないですか」

「手土産が見当たらないけど?」

「ボートですよ」

「ボート? ボートって、あなたが乗ってきたあのボート?」

「そうです。だって、外はマスコミに包囲されてて、逃げられないでしょ?」

真剣な表情でニルノは言った。

「すでに警察が、保護の名目でこっちに向かっています。でも保護なんて言って、警察に渡したら最後、レインがどうなるかなんて 子供でも想像がつきますよ。その前に、逃げましょう。とりあえず、脱出ルートを確保してありますから」

「その脱出ルートを使って、クレーター・ルームの外まで行けるかしら?」

「ええ、大丈夫です」

よし、とルツは頷いた。

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