「それじゃマリサはお泊りセットに宿題。レインと父さんはそこにいて。私は荷物を用意してくるから、あなたはボートを準備。 五分で支度するわよ!」

 言うなり、ルツはマリサを連れて、階段を駆け上がっていった。

 ニルノはよしきた、とばかりに張り切って、川へ続く窓を開けた。

 途端に、上の方から、とんでもない喧騒が降り注いだ。

『領主は人間農場システムを廃止しろーっ! 人間農場は史上最悪な非人道的システムである!  人間農場は史上最悪な非人道的システムである! 政府は即刻、人間農場システムを廃止せよ!』

「うるせーよ! じゃあてめーが、人間農場の家畜の代わりに、グールの皿に乗ってこいよ!」

「そうだそうだ! 前領主の時代を知らん若造が、知った風な口を利くな!」

『自分たちさえ良ければいいのか? 保身の為に人間農場システムを黙認するなら、我々も農場で行われている虐殺の加担者だ!』

 安物のスピーカーと、野次馬の罵声。それらに混じって、パトカーのサイレン、騒ぎを収めようとする警笛、 玄関の扉を叩く音が聞こえる。

「セノさん、ご在宅ですか。警察です! 犯罪予防法特別措置法により、レイン君に保護要求が出ています! セノさん!」

「何やってんの、さっさと引きずり出しなさいよ!」

「何故家畜なんかに使骸をつけるんだ! 世の中には体の不自由な子供が他にも大勢いるのに!」

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