おっと、いけない。俺が不安がってどうする。

 タキオが右肩をこきり、と鳴らすと、ロミとニルノははっと体を震わせた。

「緊張するな。俺たちはただ、豪華客船を見物しに来た観光客だ。挙動不審だと、怪しまれるぞ」

 港に接岸したユニコーン号の全長は、三百メートル近くもあるだろうか。鷺の嘴のごとき優雅な角度を持つ船首から 船尾へ、歩けど歩けど純白の船殻に終わりが見えない。
 船体側面にずらりと並ぶ窓と、救命ボート。その上の甲板。そこを行き来する船員たち。甲板の上の船楼は、白い岩盤を 幾重にも重ねた小山のような外観をしている。その後ろにある煙突には銀色のユニコーンが画かれ、 シー・コン社の旗と、黄色の地に緑の豹を描いた、レトー領主ヒューゴの紋章旗がはためいている。

 車で港を占拠し、高さ五十メートルはある豪華客船を見上げる見物客たちに混じって、タキオたちは船首から船尾へ進んでいった。

「噂には聞いていたけど、実際見ると、想像を越えてるね」

ユニコーン号に向かってカメラのシャッターを切りながら、ニルノが言った。

「この中に、一等客室から三等客室、レストラン、映画館、プール、カジノ、ショッピングモールまで、何でも入ってるわけだ」

「いいなあ。私もいつか、こんな船で旅行してみたい」

憧れの表情を浮かべるロミに、ハハハ、とニルノは笑う。

「無理無理。三等客室だって、一泊十万以上はするんだから」

ぼったくってんなあ、とタキオは呟いた。

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