一拍遅れてロミもニルノを連れて飛び出し、タキオの後に続く。甲板上で合流した三人は、そのまま近くの積荷の陰に身を潜めた。

「ぜ、絶対見られた、絶対見られた……」

 眼鏡をずり下ろしたニルノが、荒い呼吸の間に、ぶつぶつ呟く。積荷に背を預けながら、タキオは「あん?」とニルノを見下ろした。

「こんな大雑把なやり方…… 絶対、誰かに気づかれてるよ!」

「かもな」

「かもな、って……!」

「クレーンにぶつかった人、大丈夫かなあ」

こちらも荒い息を吐きながら、それでも心配そうな表情で、ロミが言う。ずり落ちたジャンパーの袖を 引っ張り上げ、タキオは肩をすくめた。

「死んじゃいないだろ。怪我人の一人や二人出てくれた方が、時間稼ぎにゃ好都合だ」

 そう言うと、タキオは積荷の陰から、港の様子、甲板の様子を窺かった。甲板に人影は見当たらないし、 港の作業員や見物客たちは皆、事故現場に目が行っている。こちらを見ている者は、誰もいない。

 思わずタキオは、胸の中で、安堵の息を吐いた。

 ニルノに言われずとも、この作戦が大雑把であるのは百も承知だ。しかし、最低限の下調べしか出来ていない状況で、 潜入出来る方法など限られている。
 表面上は自身ありげに振舞っていたが、この、一か八かの作戦が上手く行くかどうか、 最も懸念していたのは、立案者であるタキオ自身に他ならなかった。

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