ボーッ、と、遥か海底で海神が法螺貝を吹くような音が響いてきた時、ロミは、もう戻れない、と胸の中で呟いた。

 船は出航してしまった。三日後にタラ島へ到着するまで、もう船から降りることは出来ない。無論、航海中にエイト・フィールドに 捕まってしまったら、三日後と言わず今すぐにでも、陸ではなく、海底へ降りることになるだろう。

 一瞬も気が抜けない三日間が、始まったのだ。

「まずは船内の見取り図と、三日間の日程表だ」

 エンジンの回転する轟音に包まれた、船尾に近いリネン室で、タキオは言った。

 そこは、何とか船楼に入り込んだタキオが短い時間で見つけた、とりあえずの隠れ場所だった。
 船の中に、皺一つない真っ白なシーツがふんだんに保管されたリネン室があることに、ロミは最初とても驚いた が、よく考えれば当たり前のことだ。ユニコーン号は、謂わば海上を移動する高級ホテルだ。プールやカジノまであって、 ホテルとしての基本設備がないわけがない。

 蛍光灯に照らされただだっ広い部屋には、床から天井まで届く可動式の棚が左右四つずつ設置され、 棚の中にはシーツ、タオル、バスローブ、テーブルクロス、ナプキンなど、客室に使われるあらゆる布類が保管されていた。 真夜中に出航して、少なくとも翌朝までは人の出入りがないだろう、というタキオの読みは当たり、リネン室に人がやってくる気配は まるでなかった。三人は一番左奥の棚と壁の間、人二人がやっとすれ違えるほどの狭い通路にしゃがみ、裏路地の不良のように顔をつき合わせていた。

「思った以上にでかい船だな。構造も、俺が知ってるのと違い過ぎる」

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