「君たちは何者なのかな? エイト・フィールドの人間でもないし、船員でもない。招待客なら前夜祭に出席していたはずだけど、 ドレスも着てない。つまり…… 密航者だ。ピンポーン。大当たり〜」

 ゆらゆらとした足取りで、アリオはこちらへ近づいてくる。

「密航者ってことは、あれかな? 君たちのことをエイト・フィールドに教えれば、ご褒美がもらえたりするのかな?」

 その言葉を聞くのと同時に、ロミはアリオに向かって飛び出した。

 アリオが表情を変える間もなく、そのこめかみに、左足の回し蹴りが叩き込まれる。

 アリオは一度瞬きすると、ゆっくりと目を閉じ、その場に崩れ落ちた。

「……どうするんだい?」

 少しの間沈黙があり、やがてニルノが、今にもかき消えそうな弱々しい声で呟いた。「どうしよう」と答え、 ロミは自分の声が、震えていることに気がついた。

 このままではエイト・フィールドに知られてしまう、と思ったら、自然に体が動いてしまっていた。 けれど、とりあえず相手の口を塞いで、それからどうすればいいのだ? 猿轡を噛ませ身動きが取れないようにして、リネン室に 転がしておいても、いずれはホテル従業員たちに発見される。三日間、彼の口を完全に塞ごうと思ったら、どこか絶対に人が来ない場所に 監禁するか、もしくは――

 ――殺すしかない。

 ロミはアリオを見下ろした。
 アリオは僅かに口を開け、腹が立つ程安らかな顔で眠っていた。

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