ニルノの視線を追って、ロミは振り向いた。
 アリオが隠れていたのとは反対側の棚の間から、一人の女が、こちらへ出てくるところだった。

 女性にしては背が高く、やや男性的な顔立ちだったが、こちらは紛れもない、生まれつきの女性だった。癖のある黒髪が、がっしりした顎や 高い頬骨の周りを覆い、くっきりした眉の下の瞳は鋭い。化粧は控えめで、着ている物は地味なパンツスーツだ。 皮膚は白くて美しいが、年齢はルツより上だろう。

 しかし振り向いたロミの視線を釘付けにしたのは、彼女自身ではなく、彼女が向けた銃口だった。

 それは、彼女が手にした拳銃の物ではなく、彼女の右腕に直接生えていた。

 捲り上げられたシャツの袖から覗く彼女の右腕は、金属製だった。鉄色の右手は手首から皮一枚でぶら下がり、 その断面に、冷たい銃口が光っている。


 女は無言で、銃口から弾を発射した。


 咄嗟に後ろに跳び退くロミの足元に、銃弾が撃ち込まれる。女は追撃の手を休めず、ニルノの側に跳び退いたロミへ、銃弾を撃ち続けた。 すぐ側の棚に銃弾が当たったニルノが悲鳴を上げ、中央通路をまっすぐに扉の方へ逃げ出す。

「駄目、そっちは……!」

 そう叫ぶロミも、あっという間に、扉の方へ追い詰められていく。

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