タキオは肩をすくめた。 「じゃあお前、何しにここまで来たんだよ」 「そりゃあ、君たちを、ここまで送り届ける為だろ!」 ニルノの声が大きい為か、はたまた挙動が滑稽なせいか、店内にいる他の客が、こちらを見てくすくす笑う。 皆、旅行客のようで、首からカメラを提げたり、観光案内のパンフレットを手にしている。 だが、タキオたちのような国外からの客は、一人もいないはずだ。 レトーは大小五百以上の島から成り立つ群島国である為、他国に比べて国内の観光業が盛んだが、しかしアンブルやユーラクなどと 同様に、他国間の人の出入りは厳しく制限されている。 その為、ワルハラからレトーへ密航するに当たり、あらゆる方面に人脈を持つニルノの協力は、確かに必要不可欠だった。 「けど、お前の真の役割はこれからだ」 いかにも南国らしい派手な色彩のパラソルの下で、また一口、バナナジュースを飲みながら、タキオは言った。 「ちゃんと打ち合わせ通り、機材は持って来ただろ」 「そりゃあ持って来たさ! けど、あんな計画、命がいくつあっても足りないじゃないか!」 「何だかんだで準備してきてるお前の優しさには、涙が出るよ」 タキオが茶化すと、「もういいよ!」とニルノはプリプリしながら、空になったコップを取り上げた。 -------------------------------------------------- |