ロミとニルノが危ない。

 世界に名だたる大財閥のトップ、実業家や芸能人、マフィアのボスたちと肩を並べ、一日目のオークションに出品される商品を 眺めるフリをしながら、タキオは内心、気が気ではなかった。

 著名な画家の幻の作品、往年の名女優のミイラ、新しく発見された銀山の権利書に、 とある国から持ち込まれた最新型の戦車、生成が禁止されている猛毒ガス、頭が四つある胎児のホルマリン漬け……
 大きなホールに、それらの商品が分厚いガラスケースに入れられ、趣向を凝らして並べられている様子は、さながら前衛芸術品を集めた美術館のようだ。 学芸員の代わりに、懐に銃を忍ばせたエイト・フィールドの構成員たちが商品を見張り、招待客は オークションの前に目当ての商品をチェックして回る。

 しかしタキオがチェックしているのは、ただひたすら、群集の中にロミとニルノがいないかということだけだった。

 俺が馬鹿だった。
 ロミやニルノに似た背格好の人物を見つける度に、希望と失望を味わいながら、タキオは心の中で呟いた。
 もっと別な方法を考えるべきだった。否、ユニコーン号の甲板で、マストの上にエイト・フィールドがいたことに気づいた時点で、 計画を中止すべきだったのだ。

 古代王朝遺跡から発掘された翡翠の王冠の横に立つ監視員が、じっとこちらを見ているような気がして、 タキオは視線をカタログに落とすと、熱心に読んでいるフリをした。
 背後で、招待客たちが話すのが聞こえた。

「そう言えば、聞きましたか? 船に密航者がいるらしいですよ。何でも、船に荷物を運んでいたクレーンを倒して、その隙に忍び込んできた とか……」

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