「確か君は、アスナが殺された夜、あの会場にいましたね」

 と轟音に負けぬよう声を張り上げ、パントは言った。

「私は君を見た覚えがある。けれどあの晩の招待客は、 ほとんどワルハラ警察に逮捕されたか殺されたかして、今回このオークションに参加している者は、いないはずです」

 やれやれ。これも詰めの甘さの結果か。
 隠れ場所で、タキオは舌打ちする。

「危険です、パント様。ここは我々『蠍』に任せて……」

狭い通路を塞ぐパントの小太りな体を除け、黒服たちが前に出ようとするが、パントはそれを遮った。

「私には分かりますよ。君がアスナを殺したんでしょう。そして今度は、我々を殺しに来た。蜘蛛の足を一本ずつちぎるようにね。 何と愚かな。君が何者かは知りませんが、我々エイト・フィールドを敵に回して、無事で済むと思いますか?」

 喋りながら、パントの目は、ますます吊り上がっていく。唾が飛び、口角に泡が溜まる。

 彼の後ろで、『蠍』たちは、戸惑ったような表情をしていた。恐らくは、パントがタキオを追う途中で偶然会い、 連れてきた連中なのだろう。何人かは無線で応援を呼んでいるが、エンジンの轟音がひどくて、 まともに会話が出来ないようだ。

「我々の報復を恐れなさい!」

 そんな『蠍』たちを尻目に、パントは叫んだ。

「アスナは我々の良き友人であり、賢き助言者だった! 彼女ほど、柔和で聡明な者はいなかった!  彼女を殺した者を、私は決して許しはしない! 決して!」

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