マシンガンで撃たれても傷一つ負わない姿に唖然とする男へ、タキオは近くに垂れ下がっていたクレーンの鎖を掴み、振った。 輪の一つ一つがタキオの掌よりも大きな鎖が、ビュン、と空気を切りながら男の方へ振れ、先端の重りが、彼の顔面を直撃する。 男は血と歯を撒き散らしながら、後ろへ倒れた。

 後一人、と返ってくる鎖を片手で受け止めながら、タキオは辺りを見回し、残った『蠍』の一人が、機関部の外へ逃げようとしている のを見つけた。
 良い判断だ。しかし、逃がすわけにはいかない。タキオは敵が落としたマシンガンを拾い上げ、安全装置をかけると、素早く手首を捻った。 五キロ以上あるマシンガンは、野球ボールのように宙を飛び、男の後頭部に直撃した。

 残りは『蟷螂』のボス、一千万の賞金首だけだ。

 タキオが振り向くと、顔を血だらけにしたパントが、二メートル以上はあるエンジンに拳銃を突きつけ、立っていた。

「おい、正気かよ」

とタキオが呟くと、パントは割れた眼鏡の奥の小さな目を血走らせて、言った。

「私は、アスナを殺した人間を、この手で始末したいのです」

タキオは鼻で笑った。

「やれやれ。まさか、天下のエイト・フィールドで幹部を務めてるのが、こんな奴だとはな。お前みたいなのが幹部をやってるんじゃ、 俺がもがなくたって、遅かれ早かれ、蜘蛛は死ぬだろうよ」

「何とでも言いなさい」

 ガチャリ、とパントは引き金を引く。

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