パントはそのまま、黙ってタキオを見つめていた。

「君は何故、我々エイト・フィールドを殺そうとするんです?」

 やがてパントは、静かに口を開いた。

「金の為? 名誉の為? それとも正義の為ですか? いずれにせよ、それらは全て虚しい物です。私は、金も地位も、犯罪の世界における 名誉も何もかも手に入れましたが、それらは結局、何の意味もない物だった」

 パントは微笑んだ。

「望んだ物を全て手に入れた後に、道の途中で置いてきた、たった一人の人間の方が大切だったと、気づくのですよ」

 タキオはため息をつくと、血に染まった両手を広げた。

「……それで、ユニコーン号の乗客全員と自分の命を引き換えにして、アスナの敵討ちしようってのか?  馬鹿げてるぜ。そうまでするだけの価値が、果たしてあの女にあったのかね」

 黙りなさい! とパントは絶叫した。

 その僅かな隙を、タキオは見逃さなかった。広げた両手の袖口から飛び出した小型拳銃を握ると、タキオはそのまま冷静に、 右手をパントに向けて伸ばした。


 小型拳銃から弾が発射される音は、エンジンの轟音で掻き消された。


 左胸から血を流しながら、ゆっくりその場に崩れ落ちていくパントに向かって、タキオは呟いた。

「悪いが、沈没するには、まだ早いんだ」

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