「何かねー、『蟷螂』のボスが行方不明になっちゃったんだって」

 ユニコーン号の一等客室で広いベッドに寝そべり、チーズをむしゃむしゃ食べながら、アリオが言った。
 「え?」とロミは目を丸くした。

「行方不明って…… どういうこと?」

「さあ。間違えて海に落ちたのかもしれないけど」

 アリオは興味なさそうに言った。

「船をウロウロしてる『蠍』の奴らも、何人か一緒にいなくなったらしいよ」

 タキオだ。

 ロミは、思わず呟いた。

 表情が、どんどん緩んでいくのが分かる。タキオが確かに生きていて、同じユニコーン号に乗っていると言うこと。それが分かっただけで、 垂れ込めていた分厚い黒雲が晴れ、光が差してくるように感じる。自分が向日葵のように、萎れていた首を、光にかって上げることも。

「やっぱり、君の仲間がやったの? 本当だとしたら、すごいねえ」

 そんな彼女の様子を見て、アリオは言った。

「単身の癖に、僕たちよりよっぽど行動力あるじゃん」

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