長く暗いトンネルから抜け出すように、ニルノが眠りから目を覚ました時には、ユニコーン号の航海は三日目に入っていた。

「ちょうど最後の競りが終わったところだ。タラ島には八時到着。港で、競り落とした商品の受け渡しが行われて、今年のオークションは 終了する」

 明るい陽光差し込む窓際のソファに腰かけ、文庫本をめくりながら、女が淡々と言った。
 目覚めたばかりで混乱しているニルノは、ベッドの上に体を起こしたまま、咄嗟に返事が出来なかった。その様子を見た女は立ち上がると、ニルノの眼鏡を 差し出してきた。もごもごと口の中で礼を言いながらニルノは眼鏡を受け取り、彼女のサマーニットから伸びた使骸の右腕に焦点 が合った途端、思わず悲鳴を上げた。

「き、君は……!」

「安心しろ。もうお前に危害を加えるつもりはない」

あたふたと距離を取ろうとするニルノに、オリザは冷静に説明する。彼が気絶している間に何があったのかということ。

「具合はどうだ? 多分、疲れが溜まっていたんだろう」

 体調を気遣うオリザだったが、話を聞いたニルノの顔は真っ青になり、それに答えるどころではなかった。

「もう三日目だって? そんな…… タキオは? ロミは?」

 すると、バタンと部屋の扉が開いた。驚いたニルノは反射的にベッドに潜り込もうとしたが、部屋の中に入ってきたのはロミだった。 ニルノを見たロミは喜びの声を上げ、駆け寄ってきた。

「ニルノ! 良かった、起きたんだ! もう三日目なんだよ!」

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