扉が完全に閉まるのと同時に鍵をかけ、ロミは鬼気迫る表情で振り向いた。

「録った?」

 ニルノは物陰から立ち上がり、頷いた。

「録ってるよ」

 彼の手には、小型のビデオカメラが握られていた。録画を示すランプが、赤く光っている。

 フィルムは確かに記録した。エイト・フィールドの幹部たちが、パーティ会場に閉じ込められる瞬間を。

 ロミが汗びっしょりで控え室に戻り、そのことを伝えると、タキオは満足げに頷き、扉の前からどいた。

「よし、お前ら、もう行っていいぞ」

給仕たちはすぐには動けないようだったが、やがて勇気ある一人が動き出すと、たちまち全員が、蜘蛛の子を散らすように部屋から出て行った。 最後にタキオは悠々と部屋を出て、控え室の鍵をかけた。

「中からは開けられない。会場の他の出入り口も全て施錠してある。鍵は、予備を含めて俺が全て盗った」

 ニルノの元へやってくると、カメラの前に立ち、タキオは言った。

「これで奴らは袋の鼠だ。沈没する船から、逃げられない」

 三人は揃って、会場の扉を見た。分厚い扉は、早くも異常を察知した者たちによって、内側から激しく叩かれていた。

 と、船が何かにぶつかったように、大きく揺れた。

 思わずロミはタキオにしがみつき、ニルノはカメラを構えたまま、壁に片手をつく。タキオは冷たい、灰色の瞳で言った。

「カウントダウンの始まりだ」

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