当たり前でしょ、とため息をつくと、カトリはがさつな動作で頭を掻いた。

『そもそもさあ、密航者がいるって本当なの? 港でクレーンが倒れる騒ぎがあったって言うけど、それが密航者の仕業だなんて、 ちょっと考えすぎじゃない? クレーンなんて、倒そうと思ったって倒せるもんじゃないでしょ』

『僅かでも可能性があるのなら、考慮しなければ』

ジュアンは厳しい顔で言う。

『ユニコーン号の警備が、今回の俺たちの仕事だ』

カトリの顔に、皮肉げな表情が浮かんだ。

『アスナの時には、大失敗をやらかしたものねえ。今回もしもの事があったら、あんたも、ただじゃ済まないものね』

 何秒か、沈黙があった。

 タキオは、ジュアンが怒って何か言うかと思った。しかし結局彼は何も言わず、部下数人を連れ、タキオが隠れているのとは 反対の方向へ歩き出した。

 『ま、あんまり根を詰め過ぎないことね』と、その背中に向かって、カトリが言った。

『仮に密航者がいたとしても、袋の鼠よ。船に穴でも開けない限り、大した害じゃないわ』

 その台詞を聞いたタキオは、カトリがもう一度欠伸をして、こちらに向かって歩き出すより早く、その場を離れた。

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