それからタキオが真っ先に見に行ったのは、甲板の上に吊り下げられた救命ボートだった。逃げていてくれ、と半ば祈るような気持ちで、 ボートの数を数えたが、救命ボートは一隻も減っていなかった。そしてそこから、夜を徹しての、二人の行方を探す作業が始まった。


 そして未だ、二人は見つかっていない。


 タキオはショッピングモールを当ても無くうろつくと、もう一度機関部を探しに行くか、それとも客室に潜ってみるか迷い、結局、 船楼五階のデッキテラスに出た。

 扉を開けて外に出た途端、熱い潮風がどうと体を包んだ。

 周囲を囲んでいた壁、床、天井が、人と金と銃もろとも、潮風に吸い込まれて消える。眼下に広がる船尾甲板と、 そのさらに向こうに広がる、果てのない空と海。純白に塗られたテラスに反射する、陽光。

 眩しさに目が慣れると、タキオは二人の姿がないか探しながら、デッキテラスを一周し、結局見つけられいまま船尾方向へ戻ってくると、 手すりにもたれて海を眺めた。

 見渡す限り、青い波しかない。青い波と、それよりほんの少しだけ淡い色の空を隔てる水平線しか。

 全く、あいつら何やってんだ、と海を見ながらタキオは思った。
 勘が良かったのか運が良かったのか、とにかくエイト・フィールドに見つかる前にリネン室を脱出したことは良かった。だが何故、 すぐに救命ボートに乗らなかった? そうすれば、こんな風に駆けずり回ることもせず、今頃一人で作戦の準備に取り掛かっていたのに。

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