よく出来た計画だ、とオリザは思った。

 あの少女や眼鏡が考えた計画ではあるまい。少女が「タキオ」と呼んでいた、彼らの仲間の発案だろう。 エイト・フィールドの目を盗んで船に潜入した腕と言い、発案者の大胆さ、豪胆さが窺い知れる。

 勿論幾らかは運が味方した部分もあったのだろうが、そんな部分も含め、彼が『東方三賢人』にいればどんなに心強いか。

 熟練の船員たちがボートの昇降機を操作するのを見ながら、オリザがぼんやりそんなことを思っていると、 不意に後方で大声が上がった。

「カトリ様!」

 周囲の人間と共にオリザが振り返ると、今や警備もへったくれもなく、甲板を右往左往している黒服たちが、 一人の女を囲んでいるところだった。

「『蟻』のボスだ」

とアリオが言った。

 この非常時にも関わらず、完璧に化粧を決めた女は、苦虫を潰した表情で腕を組み、甲板の中央に仁王立ちしていた。ご無事で、 と周りから声が上がる中、一人の男が疑問を投げた。

「何故ここに? あなたは打ち上げパーティーに出席されていたはずじゃ……」

「それで今頃は広間に閉じ込められているはずだって?」

カトリは大げさに頭を振った。

「部屋でパントの行方を占っていたら、パーティーに出るなってカードが出たから、その通りにしたのよ。それが、まさかこんなことになるなんてね」

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