機関部で爆発が起きた時、オリザはアリオと共に、機関部にほど近い船倉にいた。

 見張りの黒服たちを右腕の銃で撃ち殺し、死体から鍵を奪って、船倉の中に入った時だった。くぐもった爆発音がどこからか 聞こえ、同時に、船がぐらりと揺れた。オリザは咄嗟に近くの積荷を固定していたワイヤーに掴まったが、ぼんやり鼻をほじっていた アリオはつんのめるようにして転び、顔面をしたたかコンクリートの床に打ち付けた。

「これだから船は嫌だよ。今度旅行用に、セスナ機買おうかな」

冷たい床に寝転がったままぶつぶつ呟くアリオに、オリザは片手を差し伸べた。

「今のは波じゃない。どこかで爆発が起きたんだ。多分、機関部で」

「ええ〜?」

オリザの手を取ろうともせず、アリオは子供のような顔で彼女を見上げた。

「それ、やばいじゃん。この船、沈んじゃうの?」

 オリザは無言で手を引っ込め、揺れが落ち着いたと見ると、ワイヤーから手を離した。船倉に山と積まれた積荷を見上げる。 暗い船倉に積まれた何百という商品は、悪魔の棲む丘か、黒い廃墟のようだ。
 この中から古い手帳一冊見つけるのは骨が折れるな、とオリザは思った。しかし、ため息をついている場合ではない。

 船倉の天井で赤いランプが点き、サイレンが鳴り出した。

 非常事態を知らせる音と光の中で、オリザは黙々とネリダ博士の研究レポートを探し始めた。

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