タキオについての台詞、友達の土産物、人間農場の話題、ユニコーン号の話題。
 それら全てに、裏などない。彼女は、思ったことははっきりと言う性格だ。遠回しに責めたり、愚痴を言ってくるような人間ではない。

 それは恋人である自分が一番よく分かっているのに、それでもその笑顔の後ろにある、薄暗い影を振り払えない。


 彼女のせいではない。己自身に、後ろ暗いところがあるからだ。


 ――愛しい人の笑顔を見ているはずなのに、こみ上げてくるこの悲しみは、何だろう――


「ニルノ、どうしたの?」

 アイの美しい顔が、曇った。

 ニルノはソファの背へ顔を向けて隠し、口の中に残っていたクッキーを飲み込んだ。思いっきり泣いた後のような、 子供の頃、遊び疲れて家に帰り、母親から出されたミルクのような、味がした。

「……アイはさ」

 俺のどこが好きなんだ、とソファの背へ呟こうとして、ニルノは思い留まった。それはあまりに女々しすぎる。

「――俺が本当は、アンブル出身だって知ってるよね」

優しい声で、アイは答えた。

「勿論。だってあなた、全部話してくれたじゃない」

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