何の罪もない人間たちが狩られ、グールに喰われる世界を、変えてみせると、誓った。

 同じ志を胸にして死んでいった父親や先達たちのように、戦ってみせると。

 その為に何が出来るか、夜な夜な語り合った。そして立てた計画を実現させる為、二人でアンブルを脱国した。タキオは全身を使骸化し、 ニルノはワルハラ中央報道局へ入った。

 その計画が描く未来は、あまりにも果てしなかった。しかし同時に、暗黒の中の唯一つの星のように、輝いていた。 その星を目指し、いつ終わるとも知れぬ航路を、ニルノはタキオと共にただまっすぐに、進むことが出来た。

 そう、あの頃、俺たちが乗る船は、あんなにも輝いていた。まるでユニコーン号のように、真っ白に、圧倒的に。


 なのにいつの間に、俺は、気づいてしまったのだろう?


「アイ」

 とニルノは彼女の名前を呼ぼうとした。

 しかし声が掠れて、出てこなかった。
 すると不意に、うなじに、柔らかい感触がした。

 長い髪がふわりと肩にかかり、シャンプーの香りが漂う。うなじにぴったりくっついた滑らかな頬が、優しい声に合わせて動く。

 寝転んだニルノのうなじに頬を寄せ、アイは囁いた。

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