ニルノは顔を上げた。

 そっちが二度と会いたくないってなら別だが、とタキオはにやりと笑った。

『俺にとっちゃ、お前は志を共にする仲間って以前に、たった一人、友達と呼べる存在なんだから』

 だから、泣くほどのことじゃないだろ。

 タキオの声が、耳元で響く。

 ニルノは歯を食いしばりながら、その声を聞く。アイが優しくその頭を撫でる。

 涙が止まらない視界で、ロミが、寂しそうにタキオの後ろに立ち、俯いていた姿を思い出す。


 私、知ってるんだからね。本当は、あなたが――

 ――あなたが、もう、世界は変えることが出来るなんて、信じていないこと。


 彼らはとっくに、気づいていたのだ。ニルノの心変わりを。共に戦う仲間を、一人、失ったことを。

 次から次へと涙は溢れて、止めることが出来ない。

 カモミールと羊のミルクの優しい香りに包まれて、真っ白の船が、涙の海に沈んでいく。世界最大の豪華客船のように 黒い秘密を秘め、その美しい姿だけを、永遠に人々の記憶に留めて。

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