と、いつもの調子でぼんやりしていると、エッダの家の犬たちが、一斉に吠え出した。

 我に返ったレインは、その向こうにバイクの音を聞くや否や、リヤカーの後ろに隠れた。同じ畑で作業していたエッダが、 首にかけた手拭で汗を拭きながら、畑から車道へ出る。リヤカーの車輪の間から覗くと、赤い郵便配達のバイクと、白いシャツを着た郵便配達人が見えた。

「はい、今日の郵便」

「ご苦労様」

「今日は旦那さんは? 車がないね」

「猟師と、森へ鹿を撃ちに行ったの。今年はやたらと鹿に畑を荒らされたもんだから」

さらに二言三言会話し、郵便配達人は去っていく。 レインは犬たちが静かになるのを待ってから、用心深く畑へ戻った。その様子を見たエッダは、太い腰に手を当てて笑った。

「そんないちいち、臆病な猫みたいに隠れなくてもいいのに。もう誰も、あんたの噂なんかしてやしないわ。 そんなコソコソしなくたって、いいのよ」

 レインは黙って、エッダの手元を覗き込んだ。エッダは土のついた指で、ざっと郵便物をめくっていった。

「やだ、またお墓のセールスだ。家には先祖代々の立派な墓があるって言うのに…… どうせ住所を調べるんだったら、そこまで調べとけ ってのよねえ。あら」

エッダは歓声を上げた。

「ほらレイン、ルツからの手紙だよ」

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