あらやだ、と手紙を読んでいたエッダが声を上げた。 「お祖父さん、風邪をこじらせて入院したんですって」 やっぱりストレスが溜まってたんでしょうね、と言いかけて、エッダははっとしたようにレインを見た。本来表面に映るべき自分の姿も、 周りの景色も、ことごとく飲み込んで無にしてしまうような漆黒の瞳と、まともに目が合った。 エッダは戸惑ったようだったが、すぐに笑顔を作ると、レインに言った。 「大丈夫。大したことないって書いてあるから。手紙、読んであげようか?」 レインは首を振った。字を読むのなら得意だ。そう、とエッダはまだ気まずいような表情で、レインに手紙を渡した。 受け取ったレインは、白い便箋の間にもう一枚、水玉模様の便箋が入っていることに気がついた。水玉模様の便箋を広げると、 大きな字が飛び込んできた。 『おにいちゃんへ じゆうけんきゅうろうかにはったよ マリサより』 鉛筆で豪快に書かれた字の後に、これまた豪快なタッチで女の子と犬の絵が描いてある。 思わずレインは微笑んだ。 信じられないものを見たような表情で、エッダがこちらを見つめる。レインはすぐにいつもの無表情に戻ると、 手紙をズボンの尻ポケットに入れ、再び農作業に戻っていった。 -------------------------------------------------- |