やがておやつの時間になり、家へ戻ると、レインはドーナツもそこそこに、自分の部屋へ行ってベッドの上に腹這いになった。

 レインの部屋は二階の客間だ。それほど広くない部屋に二つベッドが入っており、ルツたちがいた頃は、ルツの父がもう一つのベッドに 寝ていた。
 二つのベッドとヒーター、どっしりと大きな衣装箪笥で、部屋はほぼ埋まっている。ベッドは安物のパイプベッド、壁の漆喰は剥がれ、床板には大きなシミがある。 けれど斜めになった天井には、屋根へ出られる窓があるし、ひよこや羊を縫い取ったベッドカバーは、ルツがエッダの結婚祝いに贈ったものだ。 若干黴臭いところも含め、レインはなかなかこの部屋を気に入ってた。

 レインはポケットから手紙を取り出し、読み始めた。ルツの手紙は、レインが読み易いよう、優しい言葉で書かれていた。 レインは手紙を三回読み直し、丁寧に畳むと、向かいのベッドの上に置いたリュックから、ノートと鉛筆を取り出した。

 ノートの新しいページを千切り、さて何を書こうか、とレインは考えた。書きたいことは沢山ある。けれど上手くまとまらない。 国語の読解問題を解くのとは、大違いだ。長いこと頭を捻り、ようやく書き出したが、すぐに詰まって、ベッドに突っ伏した。

 と、犬が吠え、トラックの音がした。レインは頭を上げ、トラックの音に、耳を澄ませた。トラックは家の庭で止まり、 ばたん、と運転席の開く音がした。

「お帰りなさい」

と開けっ放しの窓から、エッダの声が聞こえてくる。

「どうだった、猟は」

「上々だ」

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