夜の闇に連なる赤提灯が、頭は動物、体は人間と言う、異形の者たちを照らす。老若男女入り混じった異形の行列は、黒牛が引く山車と共に、 七色に光る地面の上を歩いていく。単調だが奇妙な、聞きようによっては不気味にも思える笛の音、鈴の音、 太鼓の音が、彼らに付随する。

「オルム様、通りませ!」

 やはり動物の頭をかぶった子供たちが、そう言いながら行列の脇を駆け抜けていく。彼らが手にしているのは、竿の先にガラス玉をぶら下げた、 ランプだ。ガラス玉には水がいっぱいに満たされており、その中で、赤や青、緑の鉱物が、蝋燭と遜色ないほどの光を放っている。

「オルム晶石って、何て不思議で、美しいのかしら」

行列を見物する客の中から、しきりにそんな声が囁かれる。

「オルム晶石は、エイゴンでも、このミドガルドオルムでしか採れない、特別な鉱石なのです」

地元の人間が、誇らしげに答える。

「ここの地面には不思議なエネルギーが蓄えられていて、それが紅玉や瑪瑙、緑柱石などに作用することによって、 ランプにも匹敵する光を放つようになるのです。昼間は明るいので分かりませんが、夜になるとほら、こうして地面が光って、 地中に沢山オルム晶石が埋まっているのが分かるでしょう」

「けどお客さん、だからって、スコップで地面を掘って、土産に持ち帰ろうたってそうはいかないのさ」

屋台の軒先に沢山のオルムランプをぶら下げた、ランプ売りが語る。

「何てったって、オルム晶石は外気に触れた途端、その輝きを失っちまうんだ。だから直接外気に触れないよう、特殊な方法で採掘されたのを、 こうして、水の中に入れるんだ。綺麗なもんだろう。辺りが暗くなれば自動的に光り出すし、電池もマッチも要らない。熱くもならない。 どうだい、オルム祭りの土産に、一つ」

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