止めとくれよ、と女は身震いした。

「死人が歩いてどっか行くわけないじゃないか。荒らされた墓の周りには、死体を引き摺ったような跡もついてたって言うし、誰かが 掘り出して、持ってったに決まってる。何か、ろくでもない目的でね。ああ嫌だ」

 老人は黙って、屋台の上の玩具を片付け始めた。

「もうお仕舞いかい?」

「どうせもう客は来んよ。こんな玩具、最初から大して売れんが」

「じゃああたしに一つおくれよ。孫にやるから」

女にブリキのロボットを一つ放り、残りを手早く風呂敷にまとめると、老人は気がついたように言った。

「そう言えば、今夜は息子どもが墓番をしとるんだ。寄って帰るとしよう。ランプを一つ貸してくれんか」

紅玉のオルム晶石が水の中でゆらゆらと浮かぶガラス玉を一つ取り、女は老人に手渡した。

「気をつけなよ」

 老人は店の看板を伏せると、手を振り、行列が行ったのとは反対方向に歩き出した。

 岩肌に沿って、通りを幾層も重ねたようなミドガルドオルムの町は、その繋ぎ目が実に急勾配だ。下りていくのは、上っていくよりずっと、 膝に負荷がかかる。風呂敷を背負った老人は、休み休み町を下っていった。

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