その藍色の浴衣の胸元、むき出しの小さな手には、血がべっとりとついている。 「お、お前が、やったんか」 震える声で老人は言った。 狼頭が、動く気配があった。縦に振ったのか、横に振ったのか―― しかし老人がその答えを知ることは、ついになかった。 老人の体に、衝撃が走った。熱い、と思う間もない。胸から大量の血を流しながら、老人は前のめりに倒れていく。 老人は子供にぶつかり、そのまま地面に転がった。 子供の手の中には、妖しく輝く林檎だけが残った。 子供は赤いオルムランプを手に、しばらくそこに無言でそこに佇んでいたが、やがてゆっくりと狼の頭を取った。 下から、小さな頭が現れる。痩せた顔に不釣合いなほど大きな瞳が、赤い光の中で、爛々と緑色に輝いている。 赤く照らされた墓地の真ん中で、イオキはぼんやりした表情で、老人を見下ろした。 -------------------------------------------------- |