「率直に聞こう。イオキはどこだ」 トーベの息は生臭く、酒臭かった。だが、その視線と声に、酔った色は、一片もなかった。 ユーリは唾を飲み、答えた。 「知らない」 ふっ、とトーベは鼻で笑った。反対側から、若者が鋭く口を挟む。 「貴様、くだらない嘘をつくな」 「嘘じゃない、イオキとはイジドールの港ではぐれて、ボートに乗ったのは俺一人だ」 必死に弁解するユーリと、今にも立ち上がってその長い指でユーリの首を締めそうな若者を尻目に、トーベはゆっくりと ブランデーを注ぐ。若者は虎のような瞳でユーリを睨んだ。 「イジドールはあの後すぐ、我々が隈なく探した。イオキ様がいるはずがない」 「落ち着け、ユタ」 トーベは鷹揚に言った。 「それは、第三者に確かめればすぐに分かることだ」 第三者? 嫌な予感と共に、ユーリはトーベを見る。 トーベは琥珀色の液体が入ったグラスを、上手そうに口に運んだ。 「あのタニヤとか言う娘に聞けばいい。漂着したお前を助けた時、他に誰かいなかったかどうか」 -------------------------------------------------- |