ユーリの心臓が、大きな音を立てて鳴った。 「聞いたぞ。あのタニヤとか言う娘は、サディスト御用達の娼婦らしいな。痛みには慣れているのかも知れん」 酒を飲み干し、トーベはにやりと笑った。金色に濡れた歯が、光った。 「だが我々の拷問にかかって、吐かなかった者は一人もいない」 勝手にしろよ、とユーリは言った。 その声は、みっともなく震えていた。 声ばかりではない。体も、胸の内も。キュロットを履いたタニヤではなく、白いワンピースを着たタニヤの姿が、目蓋に浮かぶ。 柔らかい布張りのソファに拳を押しつけ、ユーリは続けた。 「けど、彼女に聞いたって無駄だ。本当に、俺は一人だったんだから」 そうかもな、とトーベは頷いた。 「彼女が死ぬまでそうと言い続ければ、きっとそうだろう」 駄目だ。 唐突に、ユーリの胸の中で、悲鳴が閃光のように走る。 こいつらには何も言っても駄目だ。絶対に勝てない。こいつらは、本気だ。 -------------------------------------------------- |