「しかし一体何故、わざわざ水に潜って採るんです?」 警官に素朴な疑問に、上半身裸の鉱夫は得意げに答えた。 「そりゃあんた、オルム晶石ってのは、空気に触れるとただの石に戻っちまうんだ。だからああやって水の中で採って、そのまま 袋の中に入れちまうのさ。ほら、あんな風に」 と、鉱夫は、湖を指差した。指の先には、たった今、水から顔を出したばかりの鉱夫がいた。 彼の右手にピッケル、左手に、湖の水と採ったばかりのオルム晶石で満杯になったビニール袋が握られているのを見て、 警官は感心したように声を漏らした。鉱夫は誇らしげに続けた。 「この湖だって、天然の物じゃない。この採掘方法を思いついた昔の人間が、ここに穴を掘って、水を入れたんだ。それから ずっと、湖は、俺たちがオルム晶石を採るのに合わせて、深く、広くなり続けてる。この湖の大きさは、謂わば、俺たちがどれだけ 仕事をしてきたかと言う、証なのさ」 そこでイオキは隙を見て、するりと中へ入り込んだ。 採掘場内には他にも何人か警官がいたが、洞窟自体は暗いので、彼らの近くに寄らなければ大丈夫そうだった。 歩いていくと、周囲のオルム晶石の光に合わせ、肌や服が、色々な色に移り変わっていく。 湖の水を入れ替えている巨大なパイプの下を潜り、イオキは、湖から少し離れた、選別所へ向かった。 同じ洞窟の中にある選別所では、女たちが大きな水槽の前にしゃがみ、鉱夫たちが採ったオルム晶石を、色や形、明るさなどで分けていた。 しかしイオキが用事があるのは、湖から選別所まで採れた石を持っていく、子供たちの方だった。 -------------------------------------------------- |