「はあ?」

 と、少年の一人が、無理に馬鹿にしたような声を上げた。

「お前何言ってんの。俺ら、昼間、散々牧場で働かされたじゃん。あの臭い家畜小屋、掃除させられたりさ」

「それは、だって…… 先輩たちが、そうしたいってセム君に言ったんじゃないですか」

勇気を振り絞ったものの、早くも後悔した表情で、少女の声はどんどん小さくなっていく。それでも残った気持ちを振り絞り、 少女は言った。

「それに、もし本当に『人間農場』の男の子がここにいるんだとしたら…… その子はきっと、静かに暮らしたがってます。 そっとしておいてあげた方が、良くないですか? もう誰も、あの子のこと話題にしていないのに。可哀想ですよ」

 少年たちの間に張り詰めていた空気が、僅かに緩み、揺れる気配がした。
 しかしそこで、少年たちへ背を向けたままの少女が、声を張り上げた。

「だからこそ、あたしたちが見つけようとしてるんじゃないの。あいつは、ここには居ちゃいけない人間なんだから。ね?」

 同意を求めて振り向いた少女に、少年たちは背を伸ばし、「ああ」と頭を振る。

 眼鏡の少女は何か言いかけ、結局、それ以上何も言わず、俯いた。

 少年たちがやってくる。
 レインは壁から離れ、身構えた。

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