シナイ山の麓から、警察がやってきた。

 立派な徽章が光る黒い帽子に、同じ色のマントを翻した警官たちは、公民館に拠点を構えると、早速捜査を開始した。 ある者は殺人現場である墓場に赴き、ある者は町で聞き込みを。その姿はミドガルドオルムの年取った駐在よりずっと 立派だったが、同時に少し恐ろしげでもあった。

 彼らの目を避けるようにして、胸に紙袋を抱えたイオキは、採掘場に向かって歩いていた。

 そうしてようやく採掘場まで辿り着くと、そこにも警官がいた。
 イオキは中へ入るのを躊躇い、入り口から様子を窺った。

「信じられない光景ですな」

 入り口近くで、警官が鉱夫と話していた。

「まるで宇宙にいるようだ」

 全く、彼の言う通りだった。町の最上部にある採掘場は、巨大な洞窟の中にあり、ミドガルドオルムでも特に地中エネルギーが集中する この洞窟の中は、昼夜を問わず、全ての方向に、燦然とオルム晶石が輝いていた。

 そしてその中心には、大きな湖がある。とても大きく、深い湖だ。湖底の岩にも、勿論オルム晶石が含まれているので、水はあらゆる 鉱物の光が混ざり、虹色に輝いて見える。
 その中を、何人もの男たちが、潜っていた。水中眼鏡一つで、彼らは魚のように湖底へ潜り、手にしたピッケルで 湖底の岩を砕いている。

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