後部のトランクに忍び込んだテクラたちは、なおさら。

 パトカーが山道半ばに差し掛かった時、異変が起きた。後方のパトカーが突然、蛇行し始めたのだ。バックミラーでその様子を見た 前のパトカーの運転手は、声を上げた。

「何だ? 後ろの奴ら、どうしたんだ? あのままじゃガードレール破って、下に落ちる…… うわっ!」

 唐突に、バックミラーの光景を二人の人間が塞いだ。運転手は思わず急ブレーキを踏んだ。パトカーは、 危うくガードレールに突っ込みそうになる。 座席から転がり落ちながら、いち早く異変を察知した後部座席の二人が体勢を立て直した時には、遅かった。

 急停止したパトカーは、左右から、トランクから飛び出した二人の人間に挟まれていた。

「車から降りろ」

一人はノッポで一人はチビ。二人とも黒い布を顔に巻いていて、顔は分からない。警官たちは咄嗟に拳銃を抜こうとしたが、 彼らの手にマシンガンが握られているのを見て、止めた。無線へ伸びた手も、同様の理由で止まる。
 両手を挙げながら車から降りた三人は、ノッポの鮮やかな手刀で、あっという間に地面に沈められた。

 相変わらずその見事な体術に感心しながら、テクラは布を顔から剥ぎ取った。トランクの中で蒸し焼きにされた頬に、 高山の冷たい夕風が触れる。

「こっちは終わりましたよー」

「おう、こっちも終わった」

後方のパトカーへ大きく手を振ると、同じように布を取りながら、ヒヨとグレオが現れる。

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