そのスピードの差はやはり、エイゴン入国のルートにあった。

 安全策を取ったトーベは陸路でエイゴンに入国し、『夢滴楼』にユーリが いることを突き止めた。しかし、最終的には客として接触に成功したが、『夢滴楼』に軟禁状態も同然だったユーリと接触するのに、 かなりの時間がかかってしまった。 そして、ユーリからイオキが沈んだ場所を聞いて引き返し、そこからイオキが引き揚げられたことを知るにも、 また時間が。

 そこには多分に、運、不運の差もあった。だからどちらの選択肢が正しかったかと言えば、それは結果論でしかない。

 しかし結果として、トマの選択が正しく、トーベは選択を誤った。

 ようやくミドガルドオルムの入り口近くに辿り着いた時、トーベの息はすっかり上がっていた。

 岩陰に身を隠しつつ顔を覗かせると、山道からそのまま町中へ通じる階段を、数台のパトカーが塞いでいる。警官たちは階段に並べた 看板の前に立ち、町を見上げているが、その表情は犯人が見つかるよう祈っていると言うより、七色の光と影の御殿に見惚れているようだ。

「犯人が岩壁を伝って下りると言う可能性は、まるで考えていないようですね」

 ユタが隣で囁き、トーベは嘲るように金歯を剥き出した。

「この険しさだからな」

 だがやはり、警官が大勢いるこの場所は危険だ。トーベとユタは再び岩壁を伝い、山道を離れ、町の最下層にある墓場の裏へと回った。

--------------------------------------------------
[666]



/ / top
inserted by FC2 system