オルム晶石を生み出す地中エネルギー脈から外れた場所にある墓場は、上方に醸し出される虹色の光で、却って濃く濁った暗闇、 そして特有の不気味な静けさに包まれていた。

 トーベが用心深く岩壁の縁から顔を上げると、目の前に球体の墓石があった。立方体や球など様々な形をした墓石は、 荒れた地面に雑然と並び、その中心に六角形の御堂が、さらにその奥に墓場の門が見えた。
 トーベは視界の角度を何度も変え、墓場内に明かりが無いことを確かめると、勢いをつけて墓石の隣に飛び上がった。

「墓場荒らしを捕まえる為に町を封鎖している筈なのに、肝心の墓場に警官がいないとは妙ですね」

 続けてトーベの隣に立ったユタは、高い背を屈めるように片膝をつき、墓場を見渡して呟いた。墓石に軽く腰かけ、ぼろぼろになった手袋を脱ぎながら、トーベは 「そうだな」と呟いた。

「……死体泥棒の犯人は、やはり、イオキ様なのでしょうか」

 緊張と憂いを孕んだその声に、トーベは目だけ動かし、まだ若い部下の横顔を見下ろした。

 まっすぐ町を見上げた、ユタのその端正な横顔に、疲労の色は少ない。未だ整わない己の息を忌々しく思いながら、 トーベは胸中で独りごちた。

 部下の中で唯一、この岩壁を素手で登るだけの技術と体力、強い意志を持ち、ついてきた男。 並外れて高い身長、長い手足、そして何より、生まれついての異常な握力。部下の中で最も若く、顔立ちも整っている。

 掌中に収める未来の選択肢は、同年代の若者より多いだろう。
 しかし彼の未来は決まっている。

 ユーラク秘密警察の長。俺の後継者だ。

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