この任務を無事に終えた暁には、とトーベは夢想に浸った。彼を副隊長に昇格させ、自分の近くでさらなる経験を積ませよう。 そしていずれは自分に代わり、ユーラク領主の命に従い、砂漠の猟犬を引き連れる狩人となるのだ。

「ボス」

 ユタが不意に、こちらを見上げた。トーベは無言で彼を見下ろした。
 束の間、間が有り、ユタは彼特有の、常に何かに苦悩しているような眼差しでこちらを見つめたまま、 躊躇いがちに口を開いた。

「この任務の真の目的とは、何なのですか。俺は、イオキ様を捕まえたら、秘書のコジマに引き渡すということは知っています。 でもその後は、どうなるのですか」

トーベは無言のまま、答えない。暗闇の中で、ユタはいっそう、眉を顰めた。

「……この任務を命じたのは、コジマなのですか」

「コジマ? 我々はユーラク領主の勅命しか聞かぬ」

「それでは、ミトの命令ですか」

「奴は仮初の領主に過ぎん」

「それでは、我々は今、誰の命に従って動いているのですか」

 トーベはユタから目を逸らし、虹色に光る町を見つめた。美しい人喰鬼の子供が潜む、鉱山の町を。
 その口元に、笑みが浮かぶ。

「無論、お前が考えているのと同じ方だ」

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