ユタの細い瞳が見開かれる。

 信じられない、と言うようにその唇から息が漏れ、開きかけた、その時。

「鬼子を殺せ!」

 子供の、甲高い叫び声がした。

 二人ははっとして口をつぐみ、たちまち眼光を鋭くすると、声のした方へ身構えた。

「狼頭の鬼子が捕まる! 手足をもいで、蛇神さまにくれてやれ! 町の皆殺される前に、奴を捕らえて喰っちまえ!」

 不協和音がと共に、橙色の光が一つ、二つと浮かび上がる。オルムランプの明かりではない。激しく燃える、火の玉だ。

 固く閉ざされた墓場の門の向こうに現れた火の玉は、あっという間に増えていった。 錆だらけの門が、骸骨の軋むような音を立てて開く。同時に、松明の明かりに恐ろしい形相を照らしながら、男たちが 次々と雪崩れ込んできた。

「あいつめ、何処へ行きやがった!」

「隈なく探せ! 御堂の中も、怪しいぞ!」

「緑の瞳の、墓荒らし」

 狂ったような子供たちの合唱は続く。

「墓を荒らして、死体を取った。死体を取って、煮て喰った。やっぱりあいつは鬼だった! やっぱりあいつは、狂ってた!」

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