今までに聞いたこともないような平坦な口調で、オズマは言った。

「随分と大量に殺したもんだ。罪のない奴まで、道連れにしてよ」

 タキオは無言だった。

 冷たい、静かな水中に没したような沈黙は、やがて、ロミの息の根を止める前に、破られた。

「も〜、オズマ先輩、ひどいっすよ〜」

 派手な水飛沫、ごぼごぼと遠慮なく水を吐く音、今にも途切れそうな激しい息遣いを撒き散らしながら、自力で船着場へ生還した兎の上半身が、 重い音を立てて桟橋の上に倒れる。拍子に頭が取れて転がり、中の人間の坊主頭が見えた。

「危うく死ぬとこだったじゃないですか。うっ、寒ー。凍死する」

そして炸裂した盛大なくしゃみは、エイト・フィールドの包囲網に響き渡った。

 ロミの首に巻かれた腕から、緊張感が抜けた。
 すっかり気を殺がれた様子で、オズマは空いている方の手を、頭にやった。

「まあ〜、いいや。そんなことはどうでも」

その声は、普段と同じ、飄々とした調子に戻っていた。

「今回俺は、大切なお遣いを任されてんだ」

「お遣い?」

 タキオの眉が、ぴくりと動く。黒服たちが、銃を構え直す。
 オズマは頷いて、言った。

「ワトムがお前に会いたがっている。エイト・フィールドの大ボス。裏社会の帝王がな」

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